複数素材を組み合わせた
斬新なカスタマイズで、
現場で見落とされがちな
「眉毛落下対策」を可能に。
■クライアント:菓子工場
■サンロード担当:水本
今回のご依頼を頂いたきっかけは。
これまでお客様が使っていたインナーキャップは、頭から首までをキャップで包み込んで毛髪落下を防ぐ構造だったので、首周りが生地で覆われる形となり通気性が悪く「非常に暑い」という作業者からの不満が多くありました。
工場ではお菓子を溶かしたりするのに熱を使うため、室温が非常に高くなります。特に夏はひどいとのことでした。とにかく、今の帽子は暑いのと締め付けがきついのを何とかしたい、というご意向が強かったと思います。
その後、ある業界誌で当社の電石帽を取り上げてもらいまして、それが先方の担当者様の目に留まり、とりわけ「髪の毛を吸着させて落下を防ぐ」という特徴に関心を持たれてご連絡を下さいました。
どのようなご提案を?
最初は電石帽のベースモデルを提案していましたが、ヒアリングの中で先方から「眉毛を落としたくない」とのご要望を伺いました。
私たちも「眉毛の落下対策」のニーズは少なくないと考えています。普通、髪の毛の落下対策はみんな思いつくじゃないですか。だけど眉毛は短いし、少ないし、気付きにくいので対策もしづらいというのは重要な問題です。
今回のカスタマイズでは、電石帽前面の眉毛のかかる部分に、落下を防ぐための「眉毛ガード」を付けています。初めは、そのままだと少し浮いてしまうのでゴムでテンションを入れていましたが、それだと「ゴムが額に食い込んで痛い」という声がありましたのでゴムは無しにしました。
また、眉毛ガードの生地が青色なのは、通常の白色の生地よりも強度が高いためです。最初はここも白い生地を使っていましたが、テストを重ねていく中で「ガードの部分が破れてくる」という意見が出てきました。実際にかぶっている人は、知らず知らずのうちにこの部分を引っ張っていたんです。
結果、青色の生地に変更することで強度の問題も解消しましたし、同時にガードの部分が目立つようになって「眉毛はここで覆うんだよ」というのが分かりやすくなったと思います。さらにこの素材は電石帽の素材を使っているので吸着効果もあります。
他にはどのようなカスタマイズを?
メガネのツルを通す「通し穴」ですが、ここには補強の布を付けています。少し質感の違う三角形の生地がそれです。
メガネのツルを繰り返し抜き差ししていると、負荷のかかる部分が破れやすくなるので、改善のために丈夫な補強布を設けました。この部分は技術的に難しい縫製を行っています。
もう一つのポイントは、襟足にあるベルトです。最初は付けていなかったのですが、テスト段階で「毛髪のはみ出しが多いと気になる」といった声が多く、これをガードする方法としてご提案しました。
さらっとした接触冷感の生地を使っています。よく女性用の肌着で使われているもので、優しい肌触りが特徴です。トレミクロン(電石帽の素材)を使わなかったのは、接触冷感の着用感の良さと伸縮性を優先したためで、工場現場がとても暑いので、首回りは少しでも心地よさのある生地でカバーしたいと考えました。
今回のカスタマイズでは、一つの帽子に通常の生地と、眉毛と襟足と耳、全部で4種類の生地を使っています。部位や用途に応じて最適な生地をご提案できるというのは、これまでの当社の豊富なカスタマイズ実績あってこその強みだと思いますし、今回採用した素材やアイデアは他の製品開発にも生かされています。

開発には非常に時間がかかったと聞いています。
開発期間は足掛け2年になります。その間、私も九州の工場まで何度も足を運びました。テストを繰り返し、その中で出てきた課題を洗い出しては改善を重ねてきたものです。
サンプルは結構作りましたね。50パターンぐらい作ったかもしれない。「またすんの?またすんの?」って言われながら(笑)素材もデザインも、何度も変わりました。
それと、この開発期間中に先方で社内アンケートを実施されています。何しろ300人近くが働く大工場の衛生帽子を新たな製品に変更するというのですから、お客様としても結構なプロジェクトです。
従業員91名を対象に1か月半にわたって現行品と当社製品を併用してもらい、着用感や毛髪落下防止の効果、それぞれの長所・短所などについてアンケートを行うというもので、回答から見えた課題点を製品に反映させていきました。
商品開発の過程で、大変だったことは。
やっぱり眉毛ガードの部分ですね。人によって眉毛の高さや長さは違いますし、顔の彫りというか凹凸も大きさも人それぞれです。だから最初はゴムを入れて絞るようにすればうまくフィットすると考えましたが、先ほど申したように「ゴムが痛い」というご意見が案外多くて、現在の形になるまでいろいろ苦労しました。
それと襟足のベルトは、目尻にかからないようにこめかみの部分で止めていますが、こういう作りもちょっと難しかったです。
お客様の反響はいかがですか。
実はこの製品はようやく完成したばかりなので(※)、実際に使われるのは再来週からになりますが、耐久性などに関してはしばらく様子を見る必要があると思います。
ただ製品への評価ということに関しては、先ほどの社内アンケートで十分に把握できていると考えています。中でも特に先方から好感を得られたのは、襟足のベルトの部分です。非常に肌触りが良くて、しかも毛髪を包み込むような形で作られている点を非常に喜んでいただきました。
この九州工場で良い実績を作れれば、今後は別の工場にも展開していけると思いますし、ぜひそうしていきたいですね。
※ヒアリング実施時点(2026年3月24日)