私たち「異物混入ラボ」では、食品工場や薬品工場などで起こる「毛髪混入」の問題をどう防ぐかについて毎日研究しています。
ところで、そもそも髪の毛って、一日にどれくらい発生するものかご存知ですか?
言い換えれば、「人の毛髪は1日に何本くらい抜けるものなのか」ということです。
どんなことでも、問題解決のためには、その原因をよく知ることが大事ですよね!
そこで今回は、人の抜け毛や毛髪の仕組みについて取り上げたいと思います。
抜け毛を知る前に、髪の毛のことを知っておこう
抜け毛のことを知るために、まずは私たちの毛髪のつくりを理解しておきましょう。
髪の毛はこうなっている
一見すると細い糸のように見える髪の毛ですが、細胞レベルで見ると、実際は図のような三層構造になっています。
なんだか巻き寿司みたい。
毛表皮(キューティクル)
毛髪の表面、一番外側にある部分です。魚のうろこのような形をしていて、髪の内部構造を守る働きをしています。このキューティクルの状態によって髪の手触りやツヤなどの違いが出ます。
毛皮質(コルテックス)
髪の85~90%を占める繊維状の組織です。この部分の構造や水分量が、髪質や太さに影響します。髪の色を決めるメラニン色素は、主にここに含まれています。
毛髄質(メデュラ)
髪の中心部分を芯のように通っている多孔質の組織です。その役割はまだよく分かっていないようです。
髪の毛は、頭皮の奥にある毛母細胞(もうぼさいぼう)が細胞分裂したものが、毛穴から押し出されるようにして作られます。
また、髪の毛自体に治癒能力はないので、一度傷つけてしまうと自然に戻るということはありません。
だから皆さん、髪のお手入れは大切ですよ! 私も気をつけなきゃ…。
頭皮と頭髪のメカニズム
髪の毛が生えてくる根元の部分がどんな構造になっているか、こちらの図をご覧ください。
髪の毛は、地肌の外に出ている部分を毛幹、地肌の中に隠れている部分を毛根といいます。呼び方が違うだけで、毛髪であることには変わりありません。
毛根の部分は、毛包という袋のような組織に覆われていて、根元に毛球というふくらみがあります。ここに毛母細胞と、毛乳頭(もうにゅうとう)という組織があります。
この毛母細胞と毛乳頭の2つが、髪の毛の発毛・育毛に大きく影響しているのです。
毛母細胞は毛乳頭のまわりに存在し、ここで細胞分裂を繰り返します。そして毛包の中を押し出されるように上へ上へと伸びていきます。これが髪の毛となります。文字通り毛母細胞は、「毛の母」なんですね。
毛乳頭は、毛細血管から運ばれてくる栄養や酸素を毛母細胞に受け渡したり、毛母細胞の活動をコントロールしたりする役割をしています。
これらの組織が、頭皮の汚れやストレスなどによってダメージを受けると発毛・育毛機能が低下します。
ですが、毛根の発毛の働きが止まるとか、毛根がなくなるということは基本的にないそうですよ。
ちなみに、髪の伸びる速さは1日に約0.3~0.4ミリ、1ヶ月で約1センチです。夜22時~深夜2時頃が最も成長しやすいとされています。
“髪は長~いお友だち”? 髪の毛の一生を追う
髪の毛の「平均寿命」はどのくらい?
日本人の平均寿命は男女とも80歳を超えていて、世界有数の長寿国であるのはご存知の方も多いと思います。
ところで、私たちの髪の毛に「平均寿命」はあるのでしょうか?
髪の寿命、つまり髪の毛が生えてから抜けるまでの期間は、「約4~6年」といわれています。
もちろん、すべての毛が一斉に寿命を終えるわけではありません。(そんなことになったら大変だわ!)
1本1本がそれぞれに寿命を迎えて抜け落ち、また新しい毛が生えてくる、というのを頭の上では毎日のように繰り返されています。髪の毛全体だけを見ていると、そんな変化は分からないですけどね。
髪の毛が生えてから抜けるまでのサイクル
髪の毛の寿命ということについて、もう少し詳しく掘り下げます。
私たちが問題にしている「抜け毛」に直接関わるテーマですので、ぜひ知っておいてくださいね。
髪は、毛母細胞から作り出され、伸びて、やがて抜けて、また同じ毛母細胞から新しく作られて…ということを繰り返しています。
これを「ヘアサイクル(毛周期)」といいます。
ヘアサイクルには、大きく3つのフェーズがあります。
①成長期
古い毛が抜けた後、毛母細胞が活発に細胞分裂を繰り返し、毛髪が成長する時期です。
毛髪が毛球から上に押し出され、やがて髪の毛として目に見えるまでになり、さらに長く太く成長していきます。
この成長期は一般的に2~6年とされ、髪の毛全体の約80~90%が、この成長期にあります。
②退行期
成長期に細胞分裂を続けていた毛母細胞の活動が衰え、細胞分裂のスピードが減少していく時期です。
毛球は縮小し、その機能も衰えていき、そして徐々に表面のほう(浅いほう)に移動していきます。
一般的な退行期は約2週間とされ、その割合は毛髪全体の1%ほどです。
③休止期
毛母細胞の活動が完全に止まり、髪の成長がストップします。
成長を終えた髪は頭皮の表面にだんだん上がっていき、やがて抜け落ちます。また古い毛髪の奥では、次の毛髪が作られ始めています。
一般的な休止期は3~4ヶ月とされ、割合は毛髪全体の10~20%ほどです。
頭皮にあるすべての毛根で、これら3つのサイクルが繰り返されています。
髪が抜けるのは、ごく健全なヘアサイクルの1ステージ。人がいる限り、抜け毛の発生をなくすことは不可能というわけですね。
本題。人の髪の毛は、1日にどれくらい抜けるの?
人の髪の毛は約10万本
ここまで「髪の毛の仕組み」について詳しくご説明してきました。
抜け毛が出るのは避けられない、ということは分かりましたが、問題はその量です。
そもそも人間の髪の毛って何本くらいあるのでしょうか?
結論から申しますと、一般的には「約10万本」とされています。
成人の頭皮の毛穴は約4万個あると言われており、また1つの毛穴からは2~3本の髪の毛が生えています。そのまま掛け算すると8~12万本ですので、約10万本という数字は現実味がありますよね。
「そんなの、実際に数えてみたらいいじゃん!」なんて思う方は、ぜひチャレンジしてみてください!(汗)
1日の抜け毛の本数は、なんと…○○本!
「人間の髪の毛は約10万本」という数字をもとに、次は人ひとりの1日の抜け毛の本数を考えてみます。
先ほど、髪の毛の寿命(生えてから抜けるまでの期間)を約4~6年だと言いました。
これを間をとって「5年」とすると、10万本の髪の毛のすべてが5年間で生えかわる、ということになります。
生えかわる時には必ず古い毛が抜けますので、人ひとりからは5年間に10万本の抜け毛が出るわけです。
1日当たりに換算しますと、こうなります。
10万本÷(365日×5年)=54.79本
したがって「人ひとりの1日の抜け毛は約55本」と推定できます。
…けっこう、多くないですか?
もちろんこれは計算上のことで、実際は髪の数も寿命も個人差があるのですが、それでも健康な人でも、毎日50本以上は自然に抜け落ちると考えて良さそうです。
皆さまの職場には、何人の方が出入りされていますか?
例えば30人の方が8時間、動いているとしますと、単純計算ですが、
30人×55本×(8÷24)日=550本
500本以上の髪の毛が発生していることに!
一人ひとりの、毛髪混入の対策がいかに大切かを思い知らされます。
健康な人の髪の毛が抜けてしまうのはなぜ?
抜け毛は、ヘアサイクルの中でどんな人にも起こる自然現象です。その一方、抜け毛の出やすい人と出にくい人がいるのも事実。
日常生活の中にある抜け毛になりやすい原因と、その対処方法も知っておきましょう。
生活習慣
毛髪をつくる毛母細胞は、毛細血管から運ばれてくる栄養や酸素がエネルギーです。
満足に活動するためには、栄養が十分かつ血流が活発であることがとっても大切。
ダイエットのしすぎによる栄養不足や、喫煙などによる血行不良は、抜け毛や薄毛につながります。
睡眠不足や偏った食生活もよくありません。
ヘアスタイル
髪を長時間同じ方向に引っ張り続けるような髪型は、毛乳頭への負荷となる恐れがあります。
毛乳頭にストレスがかかると毛母細胞に栄養を運ぶ機能が弱くなり、これも抜け毛の原因の一つです。
特に女性の方で、ポニーテールや同じ位置の分け目の髪型を好まれる方はご注意ください。
過度のストレス
精神的なストレスが重なることで、毛乳頭に悪影響を及ぼすケースがあります。
そうなると毛乳頭の機能不全により発毛・育毛が十分に行われず、抜け毛が増えたり毛髪が細くなったりするので要注意。
ストレスは、なるべくためこまず発散しましょうね。
洗髪
頭皮にフケや皮脂などがたまると髪の成長をさまたげ、抜け毛や薄毛につながります。きちんと洗髪して清潔を保つようにしましょう。
またシャンプーの後は地肌からしっかりタオルで拭いてドライヤーで乾かしてください。髪を傷めないよう、なるべく自然乾燥が良いですね。
髪が濡れたままだと、頭皮がむれて常在菌が増え、頭皮に良くありません。
なお、乾燥肌の人は毎日洗いすぎると皮脂を取りすぎてしまうのでご注意ください。
まとめ
いかがでしたか?
一人の頭から、1日55本も髪の毛が抜けている!ということに驚かれた方も多いと思います。
抜け毛が出るのは、防ぎようがありません。大切なのは、抜けてしまった毛を現場に「落とさない」「持ち込まない」こと。
しかも一人につき55本ですから、誰としてその対策をおろそかにはできないということです。
衛生キャップの着用、ローラー掛け、エアシャワーといった毛髪混入対策の大切さを、今一度感じていただければと思います。
私たちサンロードでは、毛髪のはみ出しや落下を防ぐ高機能衛生キャップ「サニキャップ」を製造しています。よろしければぜひ公式サイトをご覧になってください!
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【参考文献】
・WEBサイト
・書籍
- 『PL対応 食品異物混入対策事典』(サイエンスフォーラム)
- 『ヘアケアの科学』(花王生活科学研究所)
- 『頭髪のすべてがわかる本』(山中伊知郎)
おまけ:トイプードルは毛が抜けないって本当?
ふっわふわの毛と愛くるしい瞳、ぬいぐるみのようで、人懐っこくて。
トイプードル、もう、かわいすぎっっ♥
この、今大人気のトイプードル。実はとても「抜け毛が少ない」犬なんです。
犬の毛の生え方には「ダブルコート」と「シングルコート」の2つがあります。ダブルコートの犬は、太くてしっかりした毛(オーバーコート)と、柔らかくて保温・保湿の機能がある毛(アンダーコート)の二重構造になっていて、アンダーコートは春と秋に生えかわるので、この時期(換毛期といいます)に抜け毛が多くなってしまいます。
一方、トイプードルをはじめシングルコートの犬は毛が一重なので換毛期というのがなく、抜け毛が比較的少ないのです。
もちろん全く抜け毛がないわけではないので、日々のブラッシングやお手入れは、ちゃんとしてあげましょうね。