食品工場やクリーンルームで、作業者が自分の毛髪を落とさないためにかぶる衛生キャップ。異物混入対策として欠かせないアイテムであり、こちらのコラムでも「電石帽」などの衛生キャップについて何度も取り上げてきました。
この衛生キャップを取り扱う上で心がけておきたい大事なポイントが「洗濯」です。衛生帽子を洗濯するのには、清潔な状態を保つという以外にも意味があるんですよ!今回は衛生キャップの洗濯の大切さや、正しい洗濯の仕方について見ていきます。
食品工場の衛生帽子は洗濯がおすすめ
衛生帽子・衛生キャップは、白衣やフードとならんで、食品工場で作業する方々にとって重要なユニフォームの一つです。現在は様々な形状やサイズの衛生帽子が販売されており、食品工場の職場環境や用途にあわせて選ぶことになります。頭部だけを覆うタイプの一般的な衛生帽子も多いですが、近年はケープ付きや通気性の良いメッシュ付きの製品も人気です。
食品工場で衛生帽子を長く使っていると、帽子は汚れや痛みがついてきます。もちろん食品工場はクリーンな環境を常に保つ必要があり、汚れた衛生帽子をそのままにしておいてはなりません。
そこでほとんどの食品工場やクリーンルームでは、次のいずれかの方法がとられています。
①汚れた衛生帽子は使い捨てて新しいものと交換する
②汚れた衛生帽子を洗濯して繰り返し使う
新しい衛生帽子に交換する方法は、衛生面では最も確実な対策ですが、一方で消費が多くなるためコスト面では負担が大きくなります。
一方、衛生帽子を洗濯して使えばコスト面での節約につながりますし、「一つのものを長く大切に使う」というスタイルはSDGs的な観点からも評価されるものです。
もちろん衛生意識の高い食品工場で使うものですから、きちんと洗濯しなければ「洗濯しきれずに残った汚れや毛髪が、製品に落ちたりしないか?」といった不安が生じるでしょう。
このコラムを通して、ぜひ正しい洗濯方法を知っていただければと思います。
食品工場の衛生帽子を洗濯する理由
異物を付着させない
一般に異物混入トラブルが起きる原因として特に多いのは、作業着や衛生キャップに付着していた毛髪やゴミなどが落下して商品に混入してしまうというものです。
これを防ぐために、作業者が持ち場に入る前には一人ひとりローラーやエアシャワーを使って衣服の汚れを落とすのですが、これに加えて、作業着やキャップをきれいに洗濯して身に着けておけば、異物の持ち込みのリスクはさらに減らせます。
普段使っている作業着や衛生キャップをきちんと定期的に洗濯することは、より確実な異物混入対策として大切な習慣なのです。
衛生キャップの機能の劣化を防ぐ
キャップの生地そのものに機能性を持った衛生キャップの場合、洗濯をこまめに行わないとその機能を劣化させる場合があります。
例えば、私たちサンロードの衛生キャップ「電石帽」は、電気分極を持った超極細繊維の不織布が電気の力で毛髪やホコリを引きつけ、落下を防ぐものです。この製品は、汚れを吸着することで徐々に吸着力が落ちてきます。そのため原則は使い捨て、どうしても継続使用する場合は洗濯が必要です。(詳しい方法は後述)
清潔さを保つ
言うまでもないことですが、衛生キャップを着用するような工場や作業場は、衛生的でクリーンであることが必然です。作業着やキャップは、常に清潔なものを着用しなければなりません。
きちんと洗濯せずに不快な汚れや汗じみ、臭いが付いてしまうようではお話になりません。そうした汚れから目には見えない雑菌などが発生し、工場内で取り扱う食品などに移ってしまう恐れもあります。
衛生帽子の洗濯方法:アウターキャップ
洗濯の大切さを再確認していただいたところで、さっそく、衛生キャップ(不織布製)の正しい洗濯方法をご説明していきます!
衛生キャップは、頭髪に直接かぶせる「インナーキャップ」と、その外側にかぶせる「アウターキャップ」の2種類があります。当社の製品でいうと「電石帽」はインナーキャップ、「サニキャップ」はアウターキャップですね。
インナーキャップは基本的に使い捨てですので、まずはアウターキャップの洗濯方法をご紹介していきたいと思います。
また、洗濯の仕方は大きく2つ、ご家庭で洗う方法と、業者に依頼する方法です。
どちらを選ぶかはその会社・工場の方針によりますが、近年は、食品を扱う事業者はHACCPによる衛生管理の義務化に伴う意識の高まりから、大手企業はもちろんのこと、業者洗濯を採用する事業者が主流となっています。
ご家庭で洗う場合
- マジックテープが付いている衛生キャップは、必ずテープを留めておきます。(ごみが付着したり、マジックテープが生地を傷めたりする恐れがあります)
- 衛生キャップを洗濯ネットに入れます。
異物が付着しないよう、他の洗濯物とは分けて入れてください。 - 洗濯機に入れて洗濯します。異物が付着しないよう、他の洗濯物と一緒にせず、できる限り単独で洗ってください。
また、製品の洗濯表示をよく確認し、正しい方法・洗剤を使ってください。 - 洗いが終わったら水を入れ替えてすすぎ、脱水を行います。
- 洗濯が終わったらネットからキャップを取り出し、表裏とも毛髪や糸くずが付着していないかを確認してから風通しの良い場所に干してください。
乾燥機を使う場合は、40度以下の温度に設定してください。
業者に依頼する場合
業務用洗濯(リネン・クリーニング)を利用する際の注意点は次の通りです。業者に依頼される際にご留意ください。
※こちらは、当社の高機能衛生キャップ「サニキャップ」の洗濯における注意点です。他の製品について詳しくはメーカー等にお問い合わせください。
ドライクリーニングは避ける
有機溶剤の洗剤を使用することにより、生地、素材の劣化が起こり、サニキャップの伸縮性が無くなる恐れや生地の破損が起こる可能性があります。
他の衣類と一緒に洗濯しない
他の衣類と洗濯すると、サニキャップに圧力がかかり、変形、破れ等の破損が起こる場合があります。必ず洗濯ネットに入れてください。
脱水はできるだけ弱く
遠心脱水により、強い力がサニキャップに加わるため、変形、破れ等の破損が起きる可能性があります。
乾燥機(乾燥時の温度)は40℃以下
サニキャップのツバの芯材は熱に弱いため、乾燥時の温度は40℃以下に設定し、長い時間をかけて乾燥させてください。
40℃以上の熱・温度で乾燥すると、ツバが大きく変形し、ツバが反りあがってしまい、顔回りの伸縮ベルトが伸びてしまいます。
※当社ではこのたび、洗濯しても型崩れのないツバを採用した新製品をリリースしました!(あとで詳しくご紹介しますね)
衛生帽子の洗濯方法:インナーキャップ
先ほどお伝えしたとおり、不織布生地のインナーキャップは原則「使い捨て」です。
どうしても洗濯をされる場合は、不織布の毛羽立ち、破れが抑えられるよう細心の注意を払い、以下の洗濯方法を参考に丁寧に汚れを洗い落としてください。
洗濯機で洗う場合
- マジックテープが付いている衛生キャップは、必ずテープを留めておきます。(ごみが付着したり、マジックテープが生地を傷めたりする恐れがあります)
- 衛生キャップを洗濯ネットに入れます。
異物が付着しないよう、他の洗濯物とは分けて入れてください。 - 常温の水で、弱水流モードで洗濯します。
洗剤は通常の合成洗剤を、標準使用量に対して約1/2の量を使います。
洗濯時間は、「洗い約5分・すすぎ約5分・脱水約2分」を目安として、短めの時間で行ってください。 - 洗濯が終わったらネットからキャップを取り出し、表裏とも毛髪や糸くずが付着していないかを確認します。
- 直射日光を避けて風通しの良い場所で自然乾燥させます。
乾燥機は使用しないでください。
手洗いの場合
- マジックテープが付いている衛生キャップは、必ずテープを留めておきます。(ごみが付着したり、マジックテープが生地を傷めたりする恐れがあります)
- 常温の水で、やさしく手もみ洗いします。
洗剤は通常の合成洗剤を、少なめに使ってください。 - 手洗いした後、洗濯ネットに入れて脱水機で脱水します(約2分)。
絶対に手で絞らないでください。(強く絞ったりすると傷みが早くなります) - 脱水が終わったらネットからキャップを取り出し、表裏とも毛髪や糸くずが付着していないかを確認します。
- 直射日光を避けて風通しの良い場所で自然乾燥させます。
乾燥機は使用しないでください。
食品工場でおすすめの衛生帽子は?
異物混入のリスクを少しでも下げるためにも、衛生キャップを定期的に洗濯して清潔な状態を保つよう心掛けたいもの。一方で、同じキャップを繰り返し洗濯しているとどうしても帽子のツバやゴムの部分が弱ってきたり、型が崩れたり、生地がヘタってきたりします。
物を大切に使い続けるのは素晴らしいことですが、そのために衛生キャップの機能が損なわれては意味がありません。「傷んできたな」と思ったらすぐ廃棄するようにしましょう。
そしてこのたび私たちサンロードでは、繰り返し洗っても型崩れのないツバを使って洗濯耐久性を向上させた、新しいアウターキャップを開発・リリースしました!
新製品「T6-21」は形態安定性に優れた素材を採用し、洗濯・乾燥による型崩れ低減に成功。乾燥器の温度も70~80℃に高耐久化し、当社の性能試験では100回のクリーニングを行った後でもツバの形がほぼ崩れないことを確認しました。(下写真参照)
実際に多くのお客様におすすめし、その耐久性は高いご消化を頂いています。
こうした製品を使っていただくのも一つの洗濯、いや選択ですね(笑)
従来のキャップ
T6-21
「T6-21」に関心のある方は、サンロード公式サイトをご覧ください。
https://www.sunroad-nara.co.jp/product/sanicap/about/t6-21.html
衛生帽子の洗濯方法まとめ
いかがでしたか?
衛生キャップの洗濯方法ひとつとっても、いろいろと細かい注意点があることがお分かりいただけたかと思います。それだけ衛生管理というのは神経を使う、妥協を許されないものなんですね。
今まであまり洗濯方法を意識していなかった方は、これを機会に、異物混入ゼロを目指して取り組んでいきましょう!
おまけ:洗濯表示、知ってますか?
洗濯と聞くと、どうしても某CMの洗濯好き男子が思い浮かんでキュンキュンしている日向みち子です。
ところで皆さんは、「洗濯表示」をご存じでしょうか。
衣料品のタグに洗濯上の注意事項を記号で表したもので、当社のサニキャップにも今回ご説明したことがちゃんと表示されています。
大切な情報が示されていますので、初めて洗う服は必ず洗濯表示を確認してから洗濯してくださいね。
「でも、記号見ても意味がよく分かんない…」
そんな人にはこれ、「洗濯表示すごろく」がおすすめ。
冗談みたいな名前ですが、楽しみながらちゃんと洗濯表示を理解できるようになっているスグレモノです。
この他にも消費者庁のサイトにはいろんな説明資料がありますので、関心のある方はぜひ。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/household_goods/laundry_symbols.html