このコラムでは主に「食品工場」での異物混入対策について取り上げていますが、それ以外のジャンルでも、製造業においては大なり小なり異物混入の問題が存在します。
異物混入が見つかると大きなトラブルに発展しかねないのはどの業種でも同じで、それぞれに実情に合った異物混入対策が行われています。
今回は、印刷工場での異物混入事例やその対策についてご説明します。印刷会社や工場にお勤めの方々はぜひご参考になさってください。
印刷の種類
「印刷」とは、紙やフィルムなどの対象物に文字・絵柄・ロゴマークなどを描画することです。一口に印刷といっても、描画の手法や使用するインキ・印刷機などが異なる様々な印刷方式があり、対象物の種類や印刷内容によって最適な方法を用います。
一般的に使われている印刷方式を大きく分けると、次のようなものがあります。
- 活版印刷:版の凸部にインキをつけて対象物に転写する方式
- オフセット印刷:凹凸のない版に付けたインキをブランケットに転写した後、対象物に印刷する方式
- グラビア印刷:版の凹みにインクを流し込んで対象物に印刷する方式
- スクリーン印刷:版にあいた孔からインクを押し出して対象物に印刷する方式
- デジタル印刷:版を使わずデジタルデータから対象物に印刷する方式
いろんな印刷があるものなんですね~。
普段なかなか意識することはありませんが、改めて身の回りを見ると、本や雑誌、段ボール、パッケージなど、何らかの印刷がされた物ばかりです。私たちの毎日の生活も、こうした印刷技術に支えられているんだと知らされます。
印刷工場で異物混入がもたらすトラブル
それでは本題の、印刷と異物混入の関係について見ていきます。
印刷物の印字や絵柄に不具合があり、求められる品質に達しないことを「印刷不良」といいます。印刷不良の内容や程度は様々ですが、深刻な不良は顧客からのクレームを招くだけでなく、生産性の低下や歩留まり低減の原因にもなってしまいます。印刷工場の品質管理を担当する方々は、いかにして印刷不良をなくすかに日々苦心されているのではないでしょうか。
この印刷不良の多くは、印刷工場での「異物混入」が原因となっているのです。
具体的には次のような事例があります。
また印刷対象物(紙など)に帯電した静電気が空気中のホコリや塵を引きつけ、その表面にスクリーンを押し付けて印刷不良が発生することもある。
様々なケースがありますが、いずれにしても問題の発生原因を早急に特定して対処することが重要です。
とっても手ごわい「静電気」
印刷工場が他業種の製造現場(食品工場など)と違うのは、扱う製品の性質上、「静電気」の発生リスクが大きい点です。
印刷工場内では常に印刷機械が稼働していて、高速で紙の加工や運搬が行われているなど、非常に静電気が発生しやすい環境にあります。
また、印刷を行う際は大量の用紙を裁断機でカットして積み上げておきます。これを印刷機に1枚1枚送って印刷していくのですが、強い圧力で密着していた用紙を分離する時に「剥離帯電」が発生します。剥離帯電とは、2つの物が接触した時に電荷が移動し、剥離によってそれぞれがプラスとマイナスの静電気を帯びる現象です。
このようにして用紙やフィルムが静電気を帯びると、空気中の微小なホコリや毛髪などの異物が付着してしまい、印刷不良の原因となります。印刷する紙の量や面積が大きいと、それだけ多くの静電気が蓄積されるため影響は甚大です。
さらに異物混入の他にも、用紙同士がくっついて重なったまま印刷機に送ってしまう「二枚取り」や、逆に用紙同士が反発して起こる不揃い、静電気によるインクのはね・にじみなど、静電気は印刷工場において多くの問題を引き起こす原因となります。まさに印刷工場の大敵といえるでしょう。
印刷工場で行われている異物混入対策
ここまでご説明してきたように、印刷工場は異物混入の発生リスクが非常に高い場所です。食品や医薬品のようにトラブルが深刻な健康被害につながる可能性は低いですが、異物混入が印刷物の品質劣化をもたらした結果、印刷のやり直しや返品・回収といった事態を招く恐れがあり、そうなれば取引先の信用失墜は避けられません。印刷工場においても、万全の体制で異物混入対策に取り組む必要があります。
静電気対策
印刷工場は、異物混入トラブルの原因となる静電気が発生しやすい環境にあります。そこで静電気対策として、多くの印刷工場で導入されているのが「イオナイザー(除電器)」です。
物が静電気を帯びている状態とは、簡単に言うと、プラスの電気とマイナスの電気のバランスが崩れている状態です。イオナイザーは、電気を帯びた粒(イオン)を発生させて対象物に当てることで、電気的にバランスが良い状態に中和する、つまり静電気を除去する働きがあります。
イオナイザーの他にも、除電ロープ・除電ひもを用いての除電や室内の湿度コントロールなどがあります。
一般的な異物混入対策
静電気対策だけでなく、他業種の製造工場などで行われている一般的な異物混入対策も行われています。例えば次のようなものです。
毛髪混入対策
- 製造室の入口にエアシャワーを設置して毛髪やホコリなどを落とす
- 粘着ローラーや吸引クリーナーで衣服の毛髪やゴミを取り除く
- 衛生キャップや体毛落下防止用作業服を着用する
- 出勤前のブラッシング
虫の侵入対策
- 窓や出入口の開放厳禁
- 粘着トラップ・ライトトラップの設置
- 窓ガラスや設備版入口の目張り
- 工場周り敷地内の定期的な除草
- 防虫薬剤の散布
金属類の混入対策
- 工具・文具類の一元管理や持ち込み禁止
- マグネットスイーパーでの清掃
その他
- 定期的に入念な清掃を行う
- 目視発見に十分な照度の確保(500~700ルクス以上)
また同じ印刷物でも、食品パッケージや医薬品の包装資材のように通常よりも高い衛生面・安全面での配慮が求められる製品の場合、印刷工場ではよりシビアに異物混入対策を行う必要があります。工場全体での陽圧管理やクリーンルームの導入、高性能の検査カメラ設置など、より高度な異物混入対策が行われます。
印刷工場での異物混入対策におすすめのサンロード製品
最後に、私たちサンロードの製品で印刷工場の異物混入を防ぐのに役立つものをご紹介いたします。
衛生帽子(衛生キャップ)
頭部から落下する毛髪をしっかりキャッチして外に出さない・落とさない衛生帽子(衛生キャップ)の着用は、印刷工場をはじめ各種製造現場での毛髪混入リスクを防ぐ基本中の基本といえる対策です。
サンロードでは、静電気の力で毛髪やホコリを強力に吸着する「電石帽」や高性能なアウター衛生帽子「サニキャップ」など、多種多様な衛生帽子を開発・販売しております。
詳しくはこちら:電石帽(株式会社サンロード)
とおさないフィルター
「とおさないフィルター」は、各種エアコンや空調ダクト、給・排気口などに直接設置するタイプのフィルターです。微細な塵やホコリ、虫などに対して非常に高い捕集力を発揮し、設置や交換も簡単でオーダーメイドにも対応。全国各地の工場様からご好評を頂いている人気商品です。
多くの人や機械が動く印刷工場には、空調設備は必須です。とおさないフィルターで空気中の異物をシャットアウトし、異物混入リスクを減らしましょう。
詳しくはこちら:とおさないフィルター(株式会社サンロード)
クリーンブース
より高いレベルでの異物混入防止が要求される印刷工程では、塵埃の侵入をシャットアウトし温度や湿度も管理できるクリーンルームやクリーンブースを設置するケースがあります。特にインクジェットプリンタを使った作業では、作業効率や印刷の品質に大きな影響があるようです。
当社の「クリーンブース」は、クリーンルームよりも簡単・低コストで局所的にクリーンルーム同様の効果を得られる製品です。
詳しくはこちら:クリーンブース(株式会社サンロード)
まとめ
今回は「印刷工場」での異物混入対策について見てきました。
印刷工場では、一般的な異物混入対策はもちろんのこと、まず「静電気」という厄介者への対策をよく考えねばならないことが分かりました。今後も機会があれば、様々な業種での異物混入対策を取り上げていきたいと思います!